当クリニック副院長が平成31年1月23日に南部医師会で「訪問診療の現状と課題」と題して講演を行いました。
学術講演会(寄稿)
訪問診療の現状と課題
旧病院名:はえばる北クリニック
新病院名:首里千樹の杜クリニック
安里千文
訪問診療は、医療設備の整っていない環境で診療を行うこと、24時間の対応が期待されること、家族や介護職員等コメディカルスタッフとの連携が重要とされること等から、トライすることをためらわれる部門であります。しかし、病院で行われた積極的な治療が実際の生活や加齢とともに生じる変化のなかで、どのように反映されているか、身をもって感じることのできる意義のある診療でもあります。
訪問診療の方法はその病院や診療所が持つている医療資源に応じて様々な形で提供されてしかるべきと思います。当クリニックは医師2名(内科医が主に訪問診療を担当)の在籍する在宅支援診療所です。以下スライドで提供する情報もこの規模の診療所が行っている状態とご理解ください。
スライド1:診療の開始は患者様の情報収集から始まります。患者様に関する前担当医家族·経済状況等の情報を収集します。
スライド2~4:在宅における診療行為は多岐にわたります。比較的よく行われるものを提示しました。ご参照ください。
スライド5~6:当クリニックでの訪問患者数は月に30 ~ 40名おり、高齢者が主です。基礎疾患だけではなく、高齢者特有の問題が起こりやすく、全身的な観察眼が必要とされます。昨年は11件の看取りを経験いたしました。予想通りのプロセスで死亡に至ったケースもあれば、予想と違う場合もあるため、患者様及びキパーソン·介護を担当する職員への細やかな説明が必要とされます。このすべてを医師が行う必要はありませんが、一緒に診療に参加するスタッフの育成が必要とされます。
今回、訪問診療を行っていくうえで困難を感じる点を5項目挙げてみました。
スライド7~13:治療や終末期の方針を立てる上で、本人の意思確認ができないことや、キパーソンが不在であることはスムーズな診療を阻害します。また総合病院等の前医との連携も非常に重要となります。
スライド14~15:また、医療提供側の環境づくりはいつも後回しになりがちです。自身の生活環境を健全に保ち、自身を大切にするための時間を確保したいところです。私は沖縄に根差して生活しておりますが、実家が県外にありますので、学会以外にもプライベートな用事で県外に行く必要がでてくることがあります。パックアップいただく諸先生には感謝に絶えません。最後にスライド16~17に診療地域の範囲に関する問題を提示させていただきました。地域が集約されるほうがより多くの患者様を訪問することができ検査が必要な際も効率よく移動することができます。中心となってコーディネートする部門があればと期待してやまないところです。
出典:平成31年4月20日 南部地区医師会報 第366号